猛勉強と一筋の光「壁の向こうにはどんな世界があるのか」
現場事務所に参考書はほとんどありませんでしたが、わずかに立て掛けられていた地すべりに関する参考書を片っぱしから読んで勉強することにしました。地すべりが素人の私にも出来ることは何かあるはずだ、という微かな希望を抱きながら。
当時の私はパソコンが少しばかり得意でした。まだWindowsも存在しないMS-DOSの時代です。そこに一筋の光が見えました。地すべり現場から毎日のように上がって来る膨大なデータをパソコンに入力し、プロッターでグラフを作成するという仕事を一環して出来る人が現場事務所にはいなかったのです。パートさんはデータの入力は出来ても、データの意味を理解していないので、異常データがあっても気づけません。また、パソコンの動作がおかしくなっても誰も直すことが出来ませんでした。
私の役割が見つかりました。
地すべりの専門家じゃなくてもデータの意味は勉強したので理解できます。現場事務所にあった参考書の勉強で十分でした。そして、自由にパソコンを操作できる人が私以外にはいませんでしたから、現場事務所の中ではある種のエキスパートです。
現場からのデータが沢山上がって来て忙しい時には徹夜仕事もしました。現場事務所で徹夜したのは私が初めてであったと聞きました。仕事が楽しくなってきました。2週間に1回の休みなど、もうどうでもよかったのです。
「仕事をするって、こういうことだったんだ!!」
ということが実感できた瞬間でした。