記憶に残る思い出って何でしょうか?
昨日まではリアルな仕事の記事を書きましたので、今日は一息入れてエッセイにしたいと思います。
写真も残っていない、物も残っていない、でも確かに人の記憶に残り続ける思い出って何でしょうか・・・
「匂いの思い出」
お母さんが毎朝作ってくれた、お弁当の卵焼きの匂い。
お父さんが毎日通勤に使っていた、皮のカバンの匂い。
私、大学4年生の終りの頃、ずっと憧れだった片想いの彼を、勇気を出してディズニーランドへ誘ってみました。
・・・彼は来てくれました。
私が思いを寄せていたことを知っていたからか、一日だけなら付き合ってもいいかな、と思ってくれたからか・・・、でも、理由はどうでもよかったんです。
私は、天国にいる気分でした。
本当に付き合っている仲ではなかったので、ケンカすることもなく、疑うこともなく、笑顔ばかりで、周りから見たら仲の良い本当の恋人同士に見えたかも知れません。
卒業間近、まだ冬の寒さが残る頃、アトラクションに並んだ時の彼の背中の匂い、転びそうになって飛びついた彼の腕の匂い。・・今でもハッキリ憶えています。
・・・あれから20年。
私は職場の同僚と結婚をして幸せに暮らしています。
あの時の写真は、勿論ありません。思い出の物もありません。あの時の彼の笑顔も忘れかけています。
・・でも、あの時の彼の匂い、私は一生忘れないと思います。