ドラマのようには行かない
彼の返事は・・・
「自分には無理だと思う。」
さすがに私も怒りが込み上げて来てしまいました。「何が無理なんだよ!やってもみないうちから何で諦めるんだ!まずはやってみろよ!失敗したっていいって言ってるだろ!失敗するのが恐いのか!自分の可能性を諦めるなよ!」まるで青春ドラマのセリフのように、というより今は松岡修三のように、といった方がいいのでしょうか、我ながらすらすらとよく出て来たものです。怒というより、彼を伸ばしてあげたいという愛情が強かったから、すらすらと出たのだと思います。
彼は言いました。「失敗が恐いとかではありません。どの会社のどんな仕事でも、そういうことに努力や苦労をしてまでやって行きたいとは思いません。それは経営者のやることです。」
「業務命令なら、辞めます。」
その後
業務命令なら辞めると言う。辞めさせたくはなかったし、辞めてほしくもなかったので、結果的には私が折れることになりました。当時、日本の景気も悪く、彼もそれなりの年齢でしたので、転職の可能性もゼロに等しかったにもかかわらず拒否反応を示したのは、よほど嫌なことだったのでしょう。
その後、日本の雇用も少し回復し、彼は今、土日は休み、残業はなし、与えられた仕事を日々真面目にこなせばよいという仕事に転職していきました。良かったと思います。人それぞれ、生きがいや遣りがいが違います。与えられた仕事をこなすだけなんて冗談じゃないと思う人もいれば、自分で仕事を取って来るなんて死んでもやりたくないと思う人もいます。
大切なことは「自分」を知ることです。自分はどんな仕事に喜びを感じ、時間を忘れ、給料など考えずに没頭してしまうのか、逆にどんな仕事は死んでもやりたくない、給料が倍になってもやりたくないと思うのかを見極めることです。そうしないと、「ぬるま湯のカエル」のように、知らず知らずのうちに5年も10年もすぐに経ってしまいます。
彼とは喧嘩別れした訳ではありませんでしたので、今でも交流しています。彼に合った仕事が見つかって本当に良かったと思っています。
次回は、この出来事で得られた教訓をまとめて終りにしたいと思います。