補聴器の使い方、間違っています!
多くのご高齢者が、せっかく買った高価な補聴器を使わずじまいにしてしまい、とても残念に思う話をよく聞きます。ご高齢になり、難聴になってしまう人も多いと思います。今までの人生で大活躍されてきたのですから、そろそろ耳も休ませてあげましょう、という人生の合図なのかも知れません。とはいっても、いつまでも家族や友達と楽しい会話をしたいですよね。そこで登場するのが「補聴器」です。
しかし、残念なことに多くのご高齢の方が「補聴器は使えない、雑音も多く入ってきて装着していられない」などの理由から、せっかく買った高価な補聴器を活用しないまま諦めてしまったり、あるいは別の補聴器に買い換えたりする話をよく聞きます。そして、別の補聴器に買い換えても、また同じことの繰り返しをなさっている方が沢山いらっしゃるとも聞きます。
私も補聴器を使っています。大きな声でハッキリしゃべってくれれば聴こえるくらいの難聴です。私の難聴は、精密検査を受けたところ、病気ではなく原因は不明で、生まれながらの難聴です。学生の頃まではなんとかなっていましたが、社会人になってからは補聴器がないと仕事になりません。打合せや会議では必須のものです。
さて、本題です。
「補聴器」は、装着さえすれば、一瞬で聴こえが改善されるものとお思いになっている方も多いと思いますが、テレビやエアコンのように購入さえすれば誰でも直ぐに使える機械ではありません。私の経験から言えば、最低でも半年くらいの訓練期間が必要です。長年の経験から断言できます。補聴器は、人間の体(正確には「脳」)を、補聴器に合せて慣らしていく機械です。そうしないと絶対に役立つものになりません。自分の体の一部に出来た時、初めて大きな効果を発揮してくれます。
では、どうすれば良いのでしょうか。
いつもは聴こえていなかった雑音が沢山入ってきても、半年間くらいは我慢して、自分の耳(正確にいうと「脳」)を補聴器仕様に訓練していくのです。そうすると、気づいた時には雑音は聞こえなくなっているはずです。特に最新の補聴器なら(100万円くらい大変高価ではありますが)、補聴器そのものにも雑音軽減装置が備わっていますから、慣れるまでに半年とは掛からないと思います。補聴器を使っていない健聴者の耳も、人体の「脳」の機能で必要のない雑音を軽減しているのです。
さて、ここまでご理解頂けたら、あとは容易です。
半年間を目標に、補聴器を自分の体の一部にしていくだけです。そして、そのサポートをしてくれるのが、補聴器を購入した販売店の技術者です。ですから、購入する「販売店」を選ぶことと、その販売店の「担当技術者」が自分と相性が合うかどうかは、大変重要になってきます。担当技術者とは、何年間にも及ぶ長いお付き合いになります。
そしてもう一点大切なことは、
何かの病気か事故で片耳の聴こえだけが難聴になった場合を除き、必ず「両耳」に装着することです。片耳だけで良いと想像される方も多いと思いますが(実は私も、最初の補聴器は片耳でした)、脳のバランスが上手く働かずに結局は両耳にした、という失敗経験があります。
聴こえも「脳」なのです。
自動車の運転に例えれば、「耳」は車本体にすぎません。「脳」が運転手です。「脳」を慣らす以外に方法はありません。私は、耳鼻科の医師ではありませんが、実際に自分の体で、長年の実験を繰り返してきた難聴と補聴器活用の経験に基づいて、誰かのお役に立てればという想いで、ここに記しています。
最後に、補聴器を活用する上で重要なことを整理しておきます。
1.両耳装着をすること。
2.自分と相性の良い担当技術者と出会うこと。
3.慣らすのは「耳」ではなく「脳」であることを理解すること。
私の長年の経験が、必要な人に届くことを祈ります。